催眠療法で病気を治す方法
「催眠術で○○を治してください」という方は多いです。実際、わずか一回のセッションで症状を治すこともあります。
しかし、症状の背景に潜む原因を考える必要があります。
ある少女の話をしましょう。
顔に火傷の跡がある中学生です。乗り物酔いがひどくバスにも乗れませんでした。
そして乗り物酔いは催眠療法で治せると聞いた少女の母親が少女を連れてきました。
顔の火傷については母親曰く「赤ん坊のころ母ちょっと目を離したときに暖炉で火傷させてしまった。」とのことです。そこでカウンセラーは自信満々に催眠術を使い、少女の乗り物酔いを治しました。
後日、母親が旅行をしようということで、少女を電車に乗せると、呼吸困難が生じるようになりました。
思春期である女の子にとって、火傷のある顔は恥ずかしくて当たり前です。
少女は「引きこもっていては母親が悲しむこと」「火傷から逃げたくない」といった考えがありました。でも、少女にとって醜い顔を世間にさらすことは耐えがたいほどの苦痛でした。そこで、乗り物酔いという形で彼女なりの現実への適応をしていたところ催眠によって強引に「少女の醜い顔を晒さないで済む」方法を奪われた結果として、呼吸困難という形で新しい現実への適応方法を見つけました。そこでカウンセラーが少女にゆっくりと催眠分析を行いました。
最初は少女が思ってもみなかったような、母親への激しい怒りや憎しみが出てきましたが、カウンセラーがどんな感情も受容していくとだんだんと落ち着いて、病気していた時はずっと母親に看病してもらっていたか、どれだけ気にかけてくれていたかといったことに気づいていきました。
催眠ですぐに症状を消えるなんてことは、原因を分析したうえで初めて有効です。
辛い環境に置かれたからうつ病になったのに、催眠でうつを取り除いても意味がありません。
こういう時はこういう催眠をかけたらいい。そんな単純なものではありません。
催眠療法では、相手に合わせた催眠が必要になります。
催眠は病気を治すのにとっても有効な手段です。ですが、心理を学んだ上で催眠を使うからこそ、病気を治すのに有効な手段となりうるのです。