動物磁気による催眠術のかけ方

18世紀フランスに、メスメルという医師がいました。彼の治療を求めて1日に3000人もの患者が殺到したこともあったくらいです。

なぜ人気だったのか。メスメルが患者に手を当てるだけで、患者は痙攣発作や失神を起こし、なんと様々な病気が嘘のように治るからです。

これは、催眠術という言葉が生まれる前。18世紀に流行した動物磁気(当時の説)による治療方法です。

現在では動物磁気というものが存在せずに催眠術によって治療が引き起こされていることが判明しています。

記事の著者:ハリー(日本催眠術アカデミー 心理国家資格保持者)
Franz Anton Mesmer:稀にメスマーと呼称されることもありますが、メスメルで統一します。

この記事で分かること

メスメリズムと呼ばれる催眠術
催眠術の有効性
パス法による催眠術のかけ方
催眠術の歴史

どのような方法でそのような催眠が行われたのか、どういう経緯で動物磁気による治療が生まれたのか完全解説します。

医師メスメルの人生

Credit: Portrait of F. A. Mesmer. Wellcome Collection. In copyright

フランスのウィーンにメスメルという医師がいました。
彼は、全宇宙を満たしている何らかのパワーが人体に影響を及ぼすと考えていました。

万有引力で有名なアイザック・ニュートンの考えなどの理論に基づいて、1766年に「人体への惑星の影響について」という博士論文を出したくらいです。

当時は現代ほど医学や心理学が発展していませんでした。まだ麻酔も使われていなった時代です。(麻酔19世紀に初めて手術に使用されました)

メスメルが、患者に磁器をかざすと患者が痙攣や失神を起こし(分離)、病気が治っていきました。

なぜ病気が治るのかについて、メスメルは「動物磁気によるもの」と主張しました。

では、当時の動物磁気による催眠は具体的にどういったものだったのか。

メスメルの催眠術のかけ方

メスメルの催眠術のかけ方は大きく分けて2種類、集団と個別の催眠術をかける方法です。
一対一の場合は親指を押す、手を当てる独特、独特な目の動きをするといったものです。
集団の場合は部屋の真ん中に「器」が置かれていて、「器」には鉄の棒が取り付けれています。
患者はその棒を患部に当て、他の患者と手をつなぎました。そしてメスメルが部屋を周り色々な言葉をささやいたり、杖を向けると催眠状態に入り痙攣していくというものです。

「器」以外にもメスメルが催眠術の際に使用したものがあります。「グラスハーモニカ」です。

ガラスと水分で音を鳴らす原理の楽器です。”コップの淵を湿った指でこする音”ようなイメージです。

動画のように独特な音がなりますので、当時は「人の神経に悪影響を及ぼすのではないか」「人の気を狂わせたり、霊を呼び起こしたり、聞いた人を死に陥れる楽器だ」等と言われていました。

もちろん、当時の言い伝えのようなもので死に至るほどの効果はあるわけありません。
※但し、催眠にかかりやすい音楽というものは存在します。

メスメルは人間や動物の体を動かす磁気力「動物磁気」(animal magnetism) があると考えました。

このメスメルが行った催眠術をメスメリズムと呼びます。

メスメルの追放と動物磁気の調査

当時は「グラスハーモニカ」が禁止令が出ていました。それでもメスメルは「グラス・ハーモニカ」を使って治療をしており、18歳の盲目の音楽家パラディスの際に周囲にバレてしまいます。

音楽家パラディスの治療が成功したならまだしも、治療が失敗に終わったこともあり、非難が殺到しました。
結果、「グラス・ハーモニカ」を使用した罰としてメスメルはウィーン追放を命じられてしまいました。

その後、メスメルはパリに行き富裕層の住む街で治療を続けます。

優秀な医者シャルル・デスロンが弟子となり、弟子の協力を得て「動物磁気の発見に関する覚書」という本を書きました。

1784年に、当時の王様であるルイ16世は、9人を動物磁気の調査のための委員として任命した。

その中には以下の歴史に大きく貢献した有名な人たちもいました。

・アントワーヌ・ラヴォアジエ
質量保存の法則を発見した近代化学の父

・ジョゼフ・ギヨタン
ギロチンの名前の由来にもなった医師

・ジャン=シルヴァン・バイイ
初代パリ市長

・ベンジャミン・フランクリン
グラスハーモニカの発明者、フランスアメリカ合衆国全権公使 

そんな優秀な人たちの調査の結果、動物磁気は存在しないということが判明。

メスメルは治療を続けることが難しくなり、パリを亡命。後の1815年ドイツのメーアスブルクにて亡くなりました。

メスメリズムが催眠術の発展に与えた影響

メスメルの主張した動物磁気は最終的に否定されるという結果となってしまいましたが、

メスメルの死後20年以上経った後に、ブレイド医師によってメスメルが行ったことが暗示であると主張されました。

これにより、より現代的な催眠術が開発されていくことになります。

催眠術を学びたい方へ

メスメルが行っていたような治療現象を再現したい。そう思う方もいるでしょう。

日本催眠術アカデミーの受講生には、メスメルと同じような方法で催眠術を使う方もいます。もちろん、催眠が研究されて約180年以上のノウハウがありますので、当時よりも安全且つ効果的にかけることができます。

音楽につきまして、日本催眠術アカデミーでは心地よく催眠にかけられる音源を作曲家に依頼し製作しておりますので、受講後には自由に使って頂けます。

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参考資料

Frank A. Pattie, Mesmer and Animal Magnetism: A Chapter in the History of Medicine (1994)
Darnton, Robert, Mesmerism and the End of the Enlightenment in France (Schocken Books 1970)
魔の眼に魅されて―メスメリズムと文学の研究 (異貌の19世紀) (1994)

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