催眠の実験 隠れた観察者について

あなたの頭の中に別人格が住んでいます。

そんなこと言われたら怖いですよね。

そんな催眠に関する知見をここで紹介したいと思います。

催眠術習得セミナーでは、分かりやすいように説明している内容です。ここでは実験の結果や内容から詳しく(難しく)話します。スルーしてもらっても構いません。

多重人格という現象を聞いたことはありますか?1人の人間の中に、複数の人格が存在するという現象です。

健康な人に対しても、催眠状態において別人格になってもらうことは簡単です。さらに【隠れた観察者(hidden observer)】と呼ばれるもうひとつの主体性が存在することは既に証明されています。

いきなり何を言っているのか分からないかも知れませんし、分かっても信じられないかもしれません。

そこで【隠れた観察者】が発見された実験を紹介します。

(ちなみに実験をしたのは心理の教科書で有名なあのHilgard , E. R)

「隠れた観察者」が正式に発見された実験

被験者に片手を氷水につけてもらい、5秒ごとに痛みを0-10以上で評価してもらった。全く痛くない状態が0、氷水から手を出したくなったときの痛みが10である。被験者は催眠にかかりやすい若い女性である。

実験①

催眠状態でないときに、片手を氷水につけてもらった。

結果

1分未満で10以上の痛みが報告された。

実験②

次に痛みを感じない催眠、氷水につけてない方の手が意識にないまま自動で文字を書く催眠(自動書記)をかけてから、5秒秒ごとに痛みを評価してもらった。

結果

言葉では「ゼロ」と評価されたが、意識にない手は2、5、7、8、9と実験①と同じような痛みを報告した。

考察

彼女の中には以下の二つが存在している可能性が示唆された。

1,痛みを感じていない彼女本人の意識

2,痛みを感じているもうひとつの主体性(隠れた観察者)

もちろん、痛みの軽減は催眠療法・催眠実験にて数多く行われているが、自然に痛みの記憶が戻ったという報告は一つも存在しない。

「隠れた観察者」を支持する実験

上記の実験の被験者は一名であるが故に、信頼性に足らない。

そこで催眠にかかりやすい者20名に対して次の2つの催眠がかけられた。

①痛みの軽減する催眠

②無意識のうちに痛みキー押しによって報告をする催眠

そのうち、隠れた観察者が顕著に表れた8名の報告が図のとおりである。

隠れた観察者の実験結果 図
Hilgard, E. R. (1986). Divided Consciousness; Multiple Controls in Human Thought and Action, Expanded Edition(ヒルガード,E. R. 児玉憲典(訳)(2013)分割された意識 : 「隠れた観察者」と新解離説)より引用

①によって報告された痛みが「おもての痛み」②によって報告された痛みが「うらの痛み」

結果と考察

8名に対しても、同様に【隠れた観察者】が見出された。

まとめ

そして痛みの軽減の実験以外にも、創造的語りを使った実験などでも隠れた観察者が発見されています。
まるで頭の中に別人格の小人(ホムンクルス)がいるのではと言われたくらいです。

この隠れた観察者は、人々の意識のなかに別人格が存在することを証明している訳ではありません。
実験を行ったヒルガードさんは催眠を新解離理論として説明しています。

これまでの知見の積み重ねが、催眠療法を発展させてきました。こういった数多くの実験を知ったうえで、どう催眠をかけていくのがクライエントのためになるのかを常に考えていく必要があります。

これまでの知見を総括し、いかに催眠術をかけていくかを教えているのが日本催眠術アカデミーです。

【主な引用・参考文献】

Hilgard , E. R, MorGan,A.H., Macdonald,H(1975):Pain and dissociation in the cold pressor test:A study of hypnotic analgesia with “hidden reports” through automatic key-pressing and automatic talking.Journal of Abnormal Psychology,84,280-289

Hilgard, E. R. (1986). Divided Consciousness; Multiple Controls in Human Thought and Action, Expanded Edition

(ヒルガード,E. R. 児玉憲典(訳)(2013)分割された意識 : 「隠れた観察者」と新解離説)

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